事業承継の相談を銀行にすると
「持株会社を作りませんか?」
「後継者が新会社を設立し、そこへ融資を行う方法があります」
この提案を受けた社長は多いと思います。
実際、銀行が提案する事業承継スキームのかなりの割合が、この方法です。
では、なぜ銀行はこのスキームを積極的に提案するのでしょうか?
銀行がよく提案する持株会社スキーム
流れはシンプルです。
① 後継者が新会社(持株会社)を設立
② 銀行がその会社へ融資
③ 新会社がオーナーから株式を買い取る
④ 本体会社から持株会社への配当を原資に借入返済
一見すると、
・後継者へ承継できる
・オーナーは現金化できる
・持株会社体制もできる
非常にきれいなスキームに見えます。
なぜ銀行はこの方法を勧めるのか?
理由は非常に明快です。
銀行にメリットが大きいからです。
具体的には、
・持株会社へ大型融資ができる
・金利収益が発生する
・オーナーへ多額の現金が渡る
・資産運用提案につながる
・不動産投資提案につながる
つまり、
銀行として収益化しやすいスキーム
なのです。
もちろん、すべてが悪いわけではありません。
しかし問題は、
「本当に会社に最適なのか?」
という視点が抜け落ちやすいことです。
社長が見落としやすい最大のリスク
このスキームでは、持株会社の返済原資は本体会社からの配当です。
つまり、
本体会社が高利益を出し続けることが前提
になります。
例えば、年間3,000万円返済する場合。
法人税等の実効税率を35%とすると、
約4,600万円規模の税引前利益が必要になります。
景気悪化、人件費高騰、原材料高…。
利益が落ちれば、一気に返済負担が重くなります。
ここまで丁寧に説明されずに進むケースは少なくありません。
銀行があまり提案しない「株式移転」
実は、持株会社を作る方法は他にもあります。
その代表例が「株式移転」です。
これは、新設持株会社へ既存株式を移し、
対価として持株会社株式を受け取る方法です。
特徴は、
借入を伴わずに持株会社化できる可能性がある
ことです。
では、なぜ銀行は積極提案しないのでしょうか?
答えはシンプルです。
融資が発生しにくいからです。
融資がなければ、金利収益も金融商品提案も難しくなります。
今週の結論
銀行提案のスキームが悪いわけではありません。
しかし、
「銀行が勧める=自社に最適」ではない
という視点は極めて重要です。
事業承継で本当に考えるべきなのは、
・誰のためのスキームか
・将来のキャッシュフローに無理はないか
・成長戦略につながるか
です。
事業承継は、融資の話ではありません。
会社の未来をどう設計するかという、経営そのものなのです。
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